赤塚行雄編『青少年非行・犯罪史資料』日本図書センター

赤塚行雄編『青少年非行・犯罪史資料』のパンフレットに掲載された、内藤朝雄さんの推薦文です。


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青少年問題について論じるうえでの必須資料
 「近年、青少年が未曾有の危機に陥っている。彼らは道徳を失い、社会との絆が薄れ、根腐れしてしまった。」
 こんなデマを飛ばし、若者に対する不安と憎悪を扇動して、さまざまな善意の、あるいは、善意をよそおった勢力が、よからぬことをしようとする。教育やサポートと称して、普段なら許されないような蛮行が、青少年に対してなされようとする。危機に陥っているのは、青少年がおかしくなったと騒ぎ立てる、おかしくなった政治家や評論家や精神科医や教育学者たちの方である。
 殺人や強姦の警察統計を見れば、それが高度経済成長とともに激減し、そのまま現在に至っていることがわかる。しかし、青少年が狂ったという信念に取り憑かれた識者たちは、若者はかつて「貧しさゆえの」単純で直截な犯罪を犯していたが、豊かな現代社会では人間の自然からかけ離れた、「歪んだ」犯罪を犯すようになったのだと主張する。
 ここで、若者の非行と犯罪に関する膨大な新聞記事を収集し、編年体で構成した本書をつきつけると、憎悪と不安の扇動者たちは、もう口をつぐむしかない。本書には、貧乏な時代の若者たちによる「豊かな社会に特徴的な」(と識者たちが騙るところの)非行や犯罪が、これでもか、これでもか、と出てくる。「近ごろの若者」と銘打って大々的に報道されているタイプの犯罪や非行は、昔からいくらでもあったのだ。
 青少年問題についてこれから何か論じようという者は、まずこの本に衝撃を受けなければならない。発言するのは、それからだ。
 本書が、図書館などで多くの人の目に触れることを願う。