パブリックコメント

食品安全委員会パブリックコメントを提出する。

http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_risk_radio_230729.html

わたしが提出した文章

放射性物質食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての御意見・情報の募集について」


1 科学的研究を行ったり、そのデータを用いる者は、科学的であるとはかぎらず、政治的であることが多い。 たとえば、製薬会社から助成金を得た医学研究と、そうでない医学研究では、データが大きく異なるという、科学的統計研究もある。原子力関係の研究は、医学研究者が製薬会社とつながっている以上に、政治とのつながりが大きい傾向がある。このことを考慮に入れる必要がある。世界の大国が原子力の後押しをしている。

2 今わかっていることは、大量のわからないことのなか のごく一部であり、さらに将来くつがえる可能性が高い。それは、放射能被曝のダメージの見積もりが、X線発見以来、覆り続けてきた歴史が示している。このダメージの見積もりは、歴史的には一方向的に高い値から低い値に移動してきた。また、疫学研究は、危険らしいと目星をつけられてから、結果がでるまでには多くの人が被害を受けている。「危険らしい」という目星をつけて避ける合理性について、進化心理学認知科学は、すべての判断を自然科学論文で必要な統計学的データがそろってから行う(たとえば疫学的研究)プログラムよりも、安全側に大きく傾く瞬時のリスク回避プログラムの方が合理的であると考える。たとえば野生状態で捕食動物に襲われる危険にさらされている場合、それが確実に捕食者であると科学的に確定するまで待っていたら、多くの個体は食べられているので、確定する前に、目星の段階で瞬時に逃げる個体の方が生き残る。これは安全の科学としては妥当なものである。特に何十年も継続的に行い、かつ、結果が取り返しの付かない大量死などをもたらす場合、安全の基準は、数百回のうち1回も起こらないといったタイプの基準にするのが、科学的に合理的である。  したがって、「害を為す証拠がない」を安全を配慮しない理由にするのではなく、「わからないことだらけのなかに、一部不十分なサンプルと不十分な統計的推定による不確かなデータがあるだけ」という科学的な限界認識にもとづき、「害を為さない証拠がある」原発事故以前の生活環境を基準値策定の準拠点とすべきである。







福島原発事故から出た放射性物質に汚染されたものの処理施設は、福島原発周辺の人が住めなくなった場所につくらなければならない。福島県につくらせないという福島県知事は、自分が何をやっているのかわかっているのだろうか。
 人々の命を守るための原則は、原発に近い高度汚染地域は手厚い保護を前提とした避難と移住、首都圏人口密集地域は除染である。
 今政府がやっていることは、その逆になっている。
 補償をしなくてすむために、福島県で除染のパフォーマンスを行って、住民を危険な場所に住まわせ続ける。そして、原発周辺に処理施設を創るのを拒否させてそれに同調して、全国の国土をまんべんなく放射能汚染させて、一億総被曝政策を行う。これは子ども大量病死政策でもある。今回の放射能被曝で、もっぱら死ぬのは細胞分裂が活発な子どもである。そのことで、原発周辺の(特に子どもの)死亡率と全国の(特に子どもの)死亡率の差を少なくして、原発事故の責任を回避する。
 この人道に反する政策をやめさせる必要がある。

 甘い食品基準値や瓦礫処理や肥料流通の広域化などで一億総被曝を進める政治家や役人には、大量病死の結果に至った場合は、まちがいなく刑事責任を問おう、という世論が必要だ。

 日本中の何万という子どもを殺された親たちが、許さないだろう。または、日本中の何万、何十万の癌になって死んでいく人たちが、許さないだろう。このことはよく考えれば、政治家たちにも役人たちにも、わかるはずだ。

 結果責任は、かならずとらせよ。甘い食品基準値や瓦礫処理や肥料流通の広域化で一億総被曝政策を敷く者たちは、刑務所に入れられる覚悟でやるようにさせなければ、いくらでも人を殺すだろう。無責任の体系とはそういうものだ。水俣病のときもそうだったが、多くの役人や政治家は、自分が責任をとらされなければ、いくら人を殺しても平気なのである。一般大衆は、その恐ろしさを知らなければならない。自分や家族が死体になる前に










★いじめ自殺に関連する最近の執筆から


学校での「いじめ」がなくならない理由

『おそい・はやい・ひくい・たかい』(2011年5月25日、ジャパンマシニスト社発行)56〜59頁

 「あたりまえ」のなかに、人間を破壊するメカニズムがひそんでいることがある。一昔前、男性がタバコを吸うのはあたりまえの習慣だった。現在では、この「あたりまえ」が有害な毒物摂取とみなされている。これと同じように、二〇年後には、現在の学校についての「あたりまえ」も、国家が強制した有害な生活習慣とみなされているかもしれない。
 学校では、朝から夕方まで狭い生活空間に強制的に生徒を閉じこめ、市民的な自由と権利をうばい、極端な集団生活を強制する。そこでは、「教育的」なしかたで生徒が「ともに生きる」よう、「心理的・対人的な距離を調節する自由」を剥奪し、強制的にベタベタ密着させ、「友だち」や「先生」との人間関係の政治によって運命が左右される集団自治訓練をしいる。
 これは、学校に強制収容されて「生徒」にされてしまった被害者が身も心も捧げなければならない強制労働であり、生徒のさまざまな現実感覚を、通常の市民生活とは大きく異なったものにする。その詳細については拙著『いじめの社会理論』(柏書房)『いじめの講造:なぜ人が怪物になるのか』(講談社現代新書)を参考にしていただき、ここでは、「心理的・対人的な距離を調節する自由」を剥奪することによってもたらされる破壊的な効果について述べる。

 なぜ、「軽微」ないじめで…

 私は、いじめを、「殴る、蹴るなどの暴力系のいじめ」と「シカト、悪口などのコミュニケーション操作系のいじめ」に区分しながら研究を進めてきた。研究をはじめた当初には、「コミュニケーション操作系のいじめ」だけで自殺にいたるケースが散見されるのに驚いた。なぜ、こんな軽微なコミュニケーション上のいやがらせ程度で自殺するのだろうか、と疑問に思った。
 しかし、研究を進めるうちに、学校の閉鎖的な生活空間の影響で、「心理的・対人的距離の調節能力」が失調をきたし、自由な生活空間であれば「軽微」とみなされる悪意の働きかけが、すさまじい心理的ダメージとなりうることがわかってきた。そして最近、「コミュニケーション操作系のいじめ」で自殺した中学生の親たちとやりとりするなかで、「このことを世に知らせなければ」と痛感している。自殺した子どもだけでなく、死ななかった大多数の子どもたちの苦しみも含めて、「心理的・対人的な距離を調節する自由」を奪われた子どもたちの苦しみは、世の人たちから理解されていないのではないか。
 「学校」という閉鎖的な生活空間では、まごうことなき悪意をもって迫害してくる敵を敵と認知して距離を置くことが難しくなり、近すぎる心理的距離での集団生活を無理強いされる。そうすると、その「悪意の友だち」との心理的な距離感覚がわけのわからないものになり、どういう言動に対してどの程度心理的な外傷を受けるかという、心理的調節メカニズムも大きくかく乱される。
 他人との距離感覚や、人と人とのあいだを生きる自己の感覚が狂った集団生活を送り続けた結果、「生きるのがつらくて、死にたいような気分だった」と中学時代を回想する若者はめずらくない。このような「死にたいような気分」になる生徒のごく一部が、自殺を完遂してしまう。

 若葉マークの市民として

 以上のように考えれば、通常の市民的な生活のなかでは「軽微」とみなされるはずの「コミュニケーション操作系のいじめ」だけで生徒が自殺してしまいうることは理解可能になる。もちろん、自殺にまでいたる例はごく少数である。しかし、ほんとうに死んでしまった少数の例は、「学校」という有害な環境のなかで多くの生徒が生活の質を劣化させられて、漠然と、「生きるのがつらくて、死にたいような気分」になるしかけを、はっきりと、くっきりと描いてくれる。
 周囲の大人は、学校で「生徒」にされた、第二次性徴以降の人たちの、この生きがたさを理解しなければならない。彼らは本来、学校の奴隷としての生徒ではなく、社会の中で若葉マークの市民として遇されるべき人たちだ。
 悪意を持っていやがらせをしてくる者との「心理的・対人的な距離を調節できないほどの閉鎖的生活環境」を生徒に強制することは、人道に反する、虐待であるといえる。私は、生徒をきわめて閉鎖的な生活空間に閉じこめるようなしかたで学校制度を設計し、それをすべての生徒に強制してきた国の側にも、過失責任が問われると考える。
 すべての人を学校に強制収容する制度を廃止し、より広い選択肢から選ぶことができる新たな教育制度をつくらなければならない。

「せめぎあう力と力: ネットを埋め込むいじめの講造vs講造を脱するネットの開放性」                  内藤朝雄/加納寛子 対談

『現代のエスプリ』2011年5月号通巻526号(ぎょうせい)197〜198頁


内藤:…「キモイ」がきっかけで自殺したケースでは、書き込みをした者の行為の責任だけでなく、学校を極端な閉鎖空間として設計した側にも制度設計上の過失に対する賠償責任があるように思われます。学校の閉鎖空間で集団生活さえしていなければ、「キモイ」といった書き込みで自殺するようなことは、考えられません。コミュニケーション操作系のいじめだけで自殺した女子中学生の遺族とやりとりするたびに、「学校にさえ行かなければ、こんな悪口で自殺するはずがない。現実感覚を狂わせる閉鎖空間がこの子たちを殺したのだ」という思いでやりきれなくなります。









アルジャジーラの記事の翻訳


元記事 http://english.aljazeera.net/indepth/features/2011/08/201181665921711896.html


http://bilininfojp.blogspot.com/2011/08/blog-post_19.html
より

2011年8月18日アルジャジーラの記事
福島の放射能で危機感を抱く医師たち

日本の医師ら、福島の放射能起因の公衆衛生上の問題を警告
ダール・ジャマイル

2011/8/18 14:09 アルジャジーラ

原文:http://english.aljazeera.net/indepth/features/2011/08/201181665921711896.html?utm_content=automateplus&utm_campaign=Trial5&utm_source=SocialFlow&utm_medium=MasterAccount&utm_term=tweets


重大な事故を起こした福島第一原発からいまだに放射性物質が放出される中、科学者や医師らは食物、土壌、水、空気中の放射性物質の濃度観測を義務づける国の政策の策定を求めている。

東京大学先端科学研究所教授でアイソトープセンター所長の児玉龍彦氏は、7月27日に参議院厚生労働委員会で証言した際にこう尋ねた。「原発からどれだけの放射性物質が放出されたのでしょうか?」

「政府とTEPCOはまだ放出された放射性物質の総量を報告していません」と児玉氏は述べた。[福島第一]原発では最近、極めて高い放射能レベルが検出されたが、事態はそれより遥かに悪いと同氏は確信している。

日本では、政府による放射性物質の観測がなされていないことに対する懸念が広がっている。そのため、人々は独自に観測を開始するに至ったが、それにより気味の悪いほど高レベルの放射能が見つかっている。

児玉氏の所属するセンターでは全国27か所にある放射能測定施設を使って福島の状況を綿密に観測してきた。そしてその結果は恐るべきものだ。

児玉博士によれば、継続中の福島原発の事故がこの5カ月強の間に放出した放射性物質の総量は、「広島型原爆」29個分以上に相当する。また、放出されたウランの量は広島型原爆「20個分に相当」する。

児玉氏は他の科学者たち同様、福島がもたらした現在の危機のことはもちろん、それに対する政府の不充分な対応に懸念を抱いている。彼は、政府が汚染地域の除染を開始するための大規模な対策を開始する必要があると確信している。

日本政府の原発事故対応への不信感は、影響を受けた各県の住民のあいだでは今や普通だ。人々は自分たちの健康を心配している。

最近、原発で観測された値は驚くべきものだ。

8月2日、毎時1万ミリシーベルト(10シーベルト)が原発で観測された。これは人間にとって致死的な線量で、一人の人間を1−2週間以内に殺すだけの放射能だと日本の文科省は述べた。

1万ミリシーベルトは胸のエックス線約10万回分に等しい[訳注:記事原文そのままです]。

これは地震津波によって原発が重大なダメージを被った3月時点で観測されたレベルを2.5倍上回る量である。

観測をしたのは福島第一原発を運転する東京電力(TEPCO)である。東電は、放射能を計測する機械を離れた場所から使ったのだが、正確な値を見定めることはできなかった。その計測器の最大値が1万ミリシーベルトだったからだ。

東電はさらに原発の外のがれきから毎時1000ミリシーベルトを、またある原子炉建屋の内部では4000ミリシーベルトを観測した。

福島の事故は国際原子力事象評価尺度(INES)で「レベル7」と評価されている。これは最高レベルで、1986年のチェルノブイリ原発事故と同じである。「広範囲にわたる健康影響及び環境影響をともなう放射性物質の大規模放出。計画的で拡張的な対策の実施が要求される」と定義づけられている。

この尺度でレベル7と評価された原発事故は福島とチェルノブイリのみである。これは地震の相対的なマグニチュードを表すのに用いられるものと同様、対数的な尺度である。レベルが一つ上がるごとに、事故の重大さは約10倍増す。

日本の医師たちは健康への影響が出ている患者たちをすでに診察しており、原発事故の放射能起因とみている。

千葉県の船橋二和病院の医師、ヤナギサワ・ユウコ博士はアルジャジーラに対し「子どもたちの間に鼻血や強い下痢、風邪のような症状が増え始めました」と語った。

博士はそれらの症状が被ばくによるものとした上で、このようにつけ加えた。「私たちは、これまで頼ってきた総体的知識では説明できない新しい状況に遭遇しています。福島第一原発の状況はまだ安定化していませんし、終わりも見えてきていません。まだ核物質は封印されていませんので、放射能が環境中に流出しつづけています。」


健康への懸念

最近、高い放射性物質の値が観測されたことについて、日本の茨城県で取材しているアルジャジーラアエラ・カラン記者はこう述べた。「この場所は事故発生以降ずっとこのように汚染されていた可能性が高いが、誰も今まで気づかなかったのだろう。」

福島原発の作業員たちの年間許容被ばく線量は250mSvである。

東電の広報担当者松本純一氏は、高線量が確認されたのは「今後の作業に支障のない場所です」と述べた。

しかし栃木県によれば、福島第一原発から160km離れた栃木市で加工された茶から政府の基準値を上回る放射性セシウムが発見された。これは7月上旬に市内で収穫され、加工された茶葉から検出されたという。

政府の暫定基準値の3倍以上の値だった。

ヤナギサワ医師の病院は福島から約200kmの地点にある。彼女は被ばく起因と思われる健康被害を目のあたりにし、政府のあまりにも不十分な対応に懸念を抱いている。

彼女の話によれば、4月25日に子どもの被ばく許容線量を年間1ミリシーベルトから年間20ミリシーベルトへと引き上げたのが、これまで政府がとった唯一の対応だという。

「これには医学的観点から大きな批判が湧きました」とヤナギサワはアルジャジーラに語った。「これは内部被ばくと低線量被曝の両方に関わる問題であることは間違いありません」。

グリーンピース・ジャパン事務局長の佐藤潤一氏は「子どもの被ばくレベルを大人の最大許容値の20倍に引き上げるのはまったく狂っています」と述べた。

「政治的に都合がいいとか、平時と変わらない印象を与えたいなどということのために政府が安全基準値を引き上げるのは許されません。」

米国国立科学アカデミーは「電離性放射線による生物学的影響?」(BEIR?)において低線量電離放射線による人体への影響に関する信頼性の高い推論を発表した。

この報告書は、リスクフリーの電離性放射線への被ばくなどというものは存在しないということを証明する、豊富な科学的証拠に基づいている。

BEIR?報告書は、次のように推測している。放射性物質1ミリシーベルトにつき白血病以外のあらゆるタイプのがんのリスクが1万人に1人ずつ増える。白血病のリスクは10万人に1人ずつ、ガンによる死亡リスクは1万7500人に1人ずつ増える。

1985年にノーベル平和賞を受賞した「社会的責任のための医師団」の設立時の会長、ヘレン・カルディコット博士も、同様に日本の原子力災害による人体への影響を懸念している。

放射性物質は精巣や卵巣に入りこみ、糖尿病、嚢胞性繊維症、精神遅滞のような遺伝性の病気を引き起こします。これら我々の遺伝子を介して後世代に永遠に引き継がれていく病気は、2600種類あります」

これまでのところ、急性放射線障害のケースが出たのは現場で働く東電[訳注:下請け]の作業員のみである。ヤナギサワ博士によれば低線量被曝、特に子どもたちにとってのそれが、医学界の多くの人々がもっとも懸念していることであるという。

「人間はまだ、低線量被曝や内部被ばくを正確に計測できる能力を持っていません」と博士は説明する。「(安全ではないということが)まだ科学的に証明されていないからといって安全だと主張するのは、間違いでしょう。我々はまだ状況を科学的に証明するだけの充分な情報を集めきれていないというのが事実です。そのような中で、年間1ミリシーベルトを20倍に引き上げて安全だなどと言えるはずは決してありません。」

彼女の懸念は、日本政府による新しい被ばく基準値が大人と子供の違いを考慮していないことだ。子どもの被ばくに対する感受性は大人の数倍だからである。

アルジャジーラ菅直人首相のいる官邸にコメントを求めた。

首相官邸の広報副官房長官の代理として、シタカノリユキ氏が次のように語った。日本政府は「“緊急時被ばく状況の参考レベルは年間20-100ミリシーベルト”とございます、ICRP(国際放射線防御委員会)の2007年度の勧告を参照しております。我々は過度の被ばくを回避するために、計画的避難区域と、年間20ミリシーベルトのレベルに達する地点では特定のスポット的な避難勧奨区域を定めております」。

首相官邸は、除染の努力に約230億円(3000万ドル)が割り当てられることになっており、政府は「8月末ごろまでに」除染政策を固める計画である、とシタカ氏は説明する。さらに二次予算として被災地域における健康管理とモニタリング作業に970億円(10億2600万ドル)を割り当てる、という。

「急性放射線障害」の問題を尋ねると、シタカ氏は東電[訳注:下請け]の作業員6人が250ミリシーベルト以上被ばくしたとの報告を日本政府が東電から受け取っていることを挙げたが、市民の急性放射線障害の報告があるかどうかについては何も触れなかった。

福島の危機に対する対応について、首相官邸アルジャジーラに対し、「すべての作業員に対するIDコードを使った自動的な線量管理システムの導入と、24時間体制での医師常駐など、取りうる限りのすべての対応策は取ってきております。中長期的なものを含めて健康管理をさらに改善させる問題に日本政府は引き続き取り組んでまいります。」と述べた。

シタカ氏は、児玉氏の調査結果については何もコメントしなかった。

内科医師でもある児玉氏は、過去数十年間に渡って東大病院の放射線施設で放射性物質の除染に取り組んできた。

児玉氏は言う。「東京では3月21日に雨が降り、放射性物質が毎時2マイクロシーベルトにまで上がりました。それ以来、ずっと高いレベルが続いています」。そして、自分が政府に提出した測定結果に対する適切な対応はなされていないとつけ加えた。「当時、枝野官房長官は日本人に対し、人体にただちに影響はないと言っていました」。

内部被ばくのエキスパートである児玉氏は、政府が食物中の放射性物質の計測に向けた強力な対策を取っていないことを懸念する。

「すでに事故から3カ月が経っているのに、なぜそんな簡単なことがまだ行われていないのでしょうか?」と彼は言う。「私は本当に腹が立って、怒りが爆発しました。」

児玉氏によれば、内部被ばくによってもたらされる主要な問題はガン遺伝子の生成だという。放射性物質が不自然な細胞変異を引き起こすためである。

放射性物質は、妊婦の体内の胎児、青少年、そして成長期の人間の増殖性の高い細胞にとって高いリスクがあります。大人にとってさえ、髪の毛や血液、腸管上皮などの増殖性の高い細胞は放射性物質に敏感です。」



子どもたちはより危険


慶応大学医学部放射線科の近藤誠氏は、事故後まもなく「子どもへの放射性物質の影響は大人への影響とは格段に違う」と警告した。

近藤氏は、被ばくによって子どもがガンを発症する確率は大人より何倍も高いと説明する。

「子どもの体は未発達ですから、たやすく放射性物質の影響を被ります。それによりガンや、発達遅滞が引き起こされます。また脳の発達にも影響します」と同氏は述べた。

ヤナギサワ氏は、日本政府の避難基準、および被ばく許容線量の20ミリシーベルトまでの引き上げは、「子どもの健康に危険をもたらしうる」ため、「子どもたちはより大きなリスクにさらされている」とみている。

北海道ガンセンター所長で放射線治療の専門家である西尾正道氏は、7月27日に「福島原発事故の放射性被ばく対応策の問題:現状に対する懸念」という論文を公開した。

被ばく許容線量のこのような劇的な増加は、「人々の命を軽々しく扱う」ことに等しい、と西尾氏はこのレポートで述べた。

同氏は20ミリシーベルト[という基準]について、とりわけ放射性物質に対してはるかに敏感な子どもたちにとっては高すぎると確信している。

カルディコット氏は「子どもだろうと誰だろうと、放射性物質はどんなレベルでも許容できるものではありません」とアルジャジーラに告げる。「子どもたちは大人より20倍以上も敏感です。子どもたちはいかなるレベルの放射性物質にもさらされてはいけません。絶対に。」

7月上旬、日本の原子力安全委員会は、3月下旬に行われた調査の結果、福島県の子どもの約45%が甲状腺被ばくをしていたと発表した。委員会はそれ以来まったく調査を行っていない。

ヤナギサワは言う。「日本政府は今、低線量被曝/内部被ばくの影響を過小評価し、避難基準を引き上げようとしていません。チェルノブイリで採用された避難基準にすら[達していないのです]。人々、特に子供たちの命が危険にさらされています。政府は施策の優先順位のトップに人々の命をおいてはいないことが明らかです。」

カルディコットは、放射性物質が見つかった地域の人々の健康を守るためのもっと強力な対応策が欠落していることは「厳しい非難に値する」と感じている。

「これらの高放射能汚染地帯から数百万人、特に子どもたちが避難する必要があります。」

ヤナギサワ博士は、被ばくに起因する不妊や流産のケースの増加とともに、「晩発性障がい」を懸念している。

「ガンのケースが増えるであろうことは疑いの余地がありません」と彼女は述べた。「子どもの場合、甲状腺がん白血病は数年後に現れうるものです。大人の場合、数十年間の間にさまざまなタイプのガンが増えるでしょう。」

ヤナギサワは、福島原発の作業員の間のガン発症率は「間違いなく」増加すると述べた。また、嗜眠、アテローム動脈硬化その他の慢性病も、被害を被った地域の一般住民の間に増えるだろうと述べた。

ヤナギサワ氏は、原爆の被害者の声に耳を傾けるべき時であると信じている。「被ばくするということ、直ちに影響はないといわれるということ、そして後年ガンに苦しむということ−長期間に渡ってこのように苦しむのというのはどういうことであるか、それを本当に知っているのは原爆を生き残った人々だけです。」と彼女はアルジャジーラに述べた。

放射能汚染した食物と水

日本政府の緊急災害対策本部が行った調査で福島県の水道水から放射性物質は検出されていないと、厚生労働省は8月1日のプレスリリースで述べた。

政府は不検出とは「幼児の許容値(放射性ヨウ素)を超過する結果が出ていないこと」と定義づけている。そして「水道水中の放射性ヨウ素が100bq/kgを超過した場合、幼児に水道水で薄めた粉ミルクを与えることや水道水を飲ませることを差し控えるべきである」と言う。

だが6月27日に発表されたある研究結果では、福島県の住民15人の尿から放射性物質への陽性反応が出た。

広島大学放射線生物学科名誉教授鎌田七男博士は、内部被ばくの計測をするために2度福島県に行き、研究の指揮を執った。

「内部被ばくのリスクは外部被ばくより遥かに危険です」と鎌田医師はアルジャジーラに述べた。「そして、福島の住民の方々にはまさに内部被ばくのリスクがあるのです」

厚生労働省によれば、福島県産のいくつかの生産物は、出荷制限されたままである。生乳、ホウレンソウやカキ菜を含む野菜、キャベツなど葉物野菜、シイタケ、タケノコ、牛肉などだ。茶葉の流通はいくつかの県で制限されたままである。これには茨城県全域、そして栃木県、群馬県、千葉県、神奈川県の一部が含まれる。

岩手県セシウム汚染のために8月1日にすべての牛肉の出荷を止めた。そのようにした4番目の県である。

岩手県農林水産部の専門家ジュンイチ・トクヤマ氏はアルジャジーラに対し、この危機に対してどう対処すべきなのか自分にはわからないと述べた。

福島原発から300km離れた岩手県ホットスポットが見つかるとは思わなかったので驚いたという。

「この汚染の最大の原因は、高濃度に汚染された稲わらが牛に与えられたことです」とトクヤマ氏は言った。

鎌田医師は、日本政府の福島の災害に対する対処の速度はあまりにも遅いと感じている。そして政府は福島県の「すべての町や村」で被ばく線量をチェックする必要があるという。

「政府は全体的な放射線量地図を作るべきです」と彼は述べた。「それから人体への被ばくの影響のレベルを懸念すべきです。福島県内の被ばく線量マップを作るべきです。福島だけではなく、おそらく福島の他にもホットスポットがあるでしょうから、地上の線量をチェックする必要もあります。」

カルディコットは、世界中の人々は福島第一原発で起こっている原子力危機に懸念を抱くべきだと言う。放出されつづける放射性物質は世界的な影響をもたらす。

事故を起こした原発からは11000トン以上の放射性の汚染水が海に放出されている。

カルディコットは言う。「これらの放射性物質は藻類の中で生体濃縮し、それを甲殻類が食べ、甲殻類はまずは小型の魚、それから大型の魚に食べられます。大型魚の中に放射性物質が高度に濃縮しているのはそのためです。人間は食物連鎖の頂点にいますから、最終的にもっとも多くの放射性物質をとりこみます。」

米国による広島への原爆投下から66年にあたる8月6日菅直人首相は述べた。「原子力については、これまでの“安全神話”を深く反省し、事故原因の徹底的な検証と安全性確保のための抜本対策を講じるとともに、原発への依存度を引き下げ、“原発に依存しない社会”を目指していきます。」
しかし医師や、科学者、農業専門家、そして日本の一般大衆の多くは、原発事故へのより強い対応が必要だと感じている。

児玉氏は、政府が汚染地域の除染を始めるための大規模な対策を取り始めるべきだと確信している。同氏は鉱山から漏れ出た水銀が中毒を引き起こしたイタイイタイ病の例を挙げる。イタイイタイ病のばあい、最終的に日本政府は1500へクタールを除染するのに8千億円を費やしたと言う。

「その範囲が1000倍広かったら、いったいどれほどのコストがかかるでしょうか?」








いじめの社会理論―その生態学的秩序の生成と解体

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いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)

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