いじめの直し方

何ヶ月か前、荻上チキさんとの共著『いじめの直し方』を朝日新聞出版から出しました。

いじめの直し方

いじめの直し方


この本は絵本になっています。ページをめくりながら、絵が目に飛び込んでくるようになっています。


わたしがこういう絵を描いてほしいと送った線画がすてきなプロの絵になっていました。


わたしが考え、しゃべったことが、チキさんによってすてきな文章になっていました。


そして、中学生にも読める本ができあがりました。



7月にTBSラジオDIGでしゃべりました。


サイトのポッドキャストで聞くことができます。


http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-216.html


そのなかで、ある思考実験のためのおとぎ話をお話ししました。


学校関係にかぎらず、さまざまな膠着した議論には、この構図にあてはまるものが多いと思います。

ある国では、35歳から40歳までの人を強制的に収容所の監禁部屋に閉じこめて理想的な共同生活をさせることにした。そのなかで、人々は、狭い檻に閉じこめられたネズミのように、互いに痛めつけ合うようになった。人々を監禁部屋に閉じこめること自体不当なことであり、収容所から解放するのが基本である。しかし、国は監禁部屋の生活を少しでも快適なものにしようと、壁紙を3日に一回変えたり、音楽を流したりする工夫をし、それを国民にアピールした。国民はいつのまにか、監禁部屋に閉じこめること自体を問題にしなくなった。そして、監禁部屋で35歳から40歳までの人たちが、すこしでも「マシ」な生活になるような、些末で矮小な工夫がなされたことを、あたかも問題の解決に近づく努力であるかのように報道するようになった。


先日ある大手週刊誌からインタビューを受けたのですが、企画との不適合のため載せることができなくなった文章です。

「まず学校という「しくみ」がいじめを蔓延させるという認識をもつ必要があります。
日本の学級制度では、朝から夕方まで、40人ぐらいの生徒を狭い教室(クラス)に閉じこめて、わけもわからずみんなでベタベタ生きることを強制します。すると、ネズミやハトを狭いオリに閉じこめると、死ぬまで噛んだりつついたりするのと同じように、子どもたちは集団のなかで残酷になります。」
そう語るのは『いじめの直し方』の著者で、いじめ研究の第一人者・内藤朝雄明治大学文学部准教授。
「いじめ被害者の親は、「なぜいじめのサインに気づかなかったのか」と自分を責めて、追い詰めることが多い。しかし、子どもが本気で隠そうとしている場合、見抜くことはむずかしい。とくに自尊心を徹底的に破壊されたいじめ被害者にとって、しばしば最後の「なけなし」の自尊心が、いじめを親に隠すことです。悲劇的なことに、この「なけなし」の自尊心が、いじめをわからなくさせます。
子どもたちは、学校生活によって、「みんな友だちでなければならない」「仲良くしなければならない」という洗脳をされます。親としては、そうではない!という脱洗脳の視点を日頃から示す必要があります。「みんななかよし」など存在しない。個人と個人が親密だったり疎遠だったりするだけ。暴力をふるわれたら警察。それがうまく通じれば、親がサインを見抜こうとする前に、子どもの方から学校の「イヤなヤツ」について話をし始めるでしょう。


研究者としてのわたしは、学校のいじめについは、やるべきことをすべてやったと確信しています。


事態を改善しようという熱意をお持ちの方は、政治や行政やマスメディア、そしてさまざまな現場の領域に、わたしが考えたことを運んでください。